岩田さんの訃報で思い返すこと

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ほぼ日刊イトイ新聞「星空の仕事観」より

 

僕はサラリーマンをしていたけれど、今は事業主をしている。

僕は営業をしていたけれど、今はプログラマーをしている。

 

当然ながら比較なんて失礼すぎるのだが、なんとなく今の自分と被っているように見えたこともあり、生前から数々のドキュメントを読んで、岩田さんの考えに敬服をしていた。その考えの中でも基本はやっぱりコレだ。「他の人に喜んでほしい」。この一言に尽きる。

 

―――面白い!

大学生のときに課題でカーレースゲームのJavaアプレットを作った。友人たちはこぞって挑戦し、ハイスコアを競った。僕は調子に乗って、得点をインターネット上に記録できるオンラインランキング機能を付けたり、さらに難しくする調整を付け加えた。なにをしても、僕の糧となったご褒美は『面白い!』の一言だ。

 

「面白い=幸せ」という公式はどんな場でも成り立つと信じている。Aボタンを3回程度押せば、簡単にトモダチではいなくなれる「ドラゴンクエストX」という希薄な世界で、いろいろな巡り合わせで僕のもとに集ってくれるフレンドやメンバーに対し、いかに「面白い=幸せ」の公式を成し遂げられるか。オンラインゲームの展開は早くて、遊んでいるときはすべてを忠実に追っていけない。遊んでいる時間帯も全員バラバラ。後から読んでも、まさに全員が今オンラインであるかのように、クスッと共感できるものを提供して喜ばれる空間があればいいのではないか。

 

ああ、それなら難しいことをせずに日常のありのままをまとめよう。だけど、それだけでは面白くない。そうだ、登場人物のキャラクターを際立たせるように勝手に脚色してしまえ。そのように発言するよう誘導して色づけしよう。やりすぎて怒られたら・・・そのときは素直に謝ろう。

 

これこそが、安易に立ち上げて方針に迷った、このブログの今後が固まった瞬間であり、他のチームにはない特色、なおかつ、幾千にも及ぶ「チーム」の中から集ってくれたメンバーに送れる唯一の提供物だ。およそ1年前の頭の中の考え事。今後もブログを読んで「面白い!」の声が聞きたくて―――

 

 

経営者として世に送り出した数々のゲーム機やゲームソフトで遊ぶ単なるプレイヤー、定期的に配信される小さな枠でおちゃめな動作で笑顔をふりまく役者をみる観覧者、さらにプログラマーの技術者としても尊敬していた存在。顔を合わせたこともないんだけれど、遠い存在である「社長」や「開発者」の距離をグッと近くに感じていた僕は、ただ落ち込んでおります・・。

 

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昨夜は岩田さんのプログラム代表作「バルーンファイト」を、バーチャルコンソールで購入して久しぶりにプレイ。やっぱり楽しいよ。難しい操作は必要ないし派手な画面でもない単純なゲームなのに、巧みに組まれたアルゴリズムの敵にやられては、ひたすらにパラシュートを潰してやっつけていく。満足。僕がもし岩田さんにお目にかかれたら、やっぱりこう伝えたかったよ。

 

面白いです!

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